竹内薫『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』
私が書籍を購入するのは、オンライン、大きな書店(残念ながら近所に小さな書店がない)、そして飛行機を待つ空港の売店です。竹内薫著『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』も、空港の売店でもとめました。
こういうところに並んでいるのは、大抵ベストセラーです。後で調べたらおよそ1年前の出版で、「37万部突破」とありました。ちょっとビジネス書めいたキャッチーな副題と「科学」というものへのひとびとの憧れと平易な文章で書かれていることが、ヒットの要因でしょうか。私はこれを、まだこれからたくさんのことを学ぼうとしている若いひとたちに薦めます。もちろん、「頭が固くなったなぁ」と思う同じ穴の狢さんたちにも。
冒頭から、「飛行機が飛ぶ仕組みは実はまだよく分かっていない」というカウンターパンチ。これを機内で読んだ私の気持ちを想像してみてください。でもまぁ、おおよそは無事に飛んでいるからいいんだ、これを読む前は気にもならなかったじゃないか、と思い直しましたが。いやぁ、「仕組みがよく分かっていない」ものが実用化されている例は飛行機に限ったものではないですし、そうやって実践を積み重ねていく過程で分かってくるものも多いのだろうとは思います。でも、このカウンターパンチは効きました。さすがベストセラーです。
第3章「仮説は一八〇度くつがえる」で取り上げられているロボトミー手術。今では無効な人権無視の手術として禁止になっていますが、ノーベル医学賞まで受けています。映画『カッコーの巣の上で』の、ジャック・ニコルソン演じる主人公が、ロボトミー手術を受けた後の姿は思春期入り口の私にとって衝撃的で、この手術について深い印象が刻まれているのですが、当時はもてはやされた技術だったんですね。その背景に朝鮮戦争がある、といったことも書かれています。
ここで著者が挙げているのは、科学は絶対的ではないという例です。その時点では白であったことが、後に黒にもなり、さらにはまた白になることだってあり得るということ。いくつかの面白い例が提示されていて、その中にはアインシュタインの宇宙定数もあります。これは、一旦評価され、その後に新たな理論が出てきてアインシュタイン自身がダメ出しをしたものの、彼の死後再評価される、という経過を辿っています。
著者は理論に反する実験や観察がでてきたらその理論はダメだということを潔く認める、それが科学だ
というポパーの言葉を引用しています。宗教は反証されても続いていくが、科学の理論は反証されたらそこでおしまい。そして、科学はすべて近似にすぎ(ファインマン)
ず、科学と真理は、近づくことはできてもけっして重なることはできない、ある意味とても切ない関係
と述べています。
私は、相対化することは真実に近づくための手段で、「絶対的な真理」に科学は接することができると考えていたので(この本を読んで自分がそう考えていることに気付きました)、この切ない関係は実はとてもショックでした。
話が通じないのは、自分の仮説が相手に通じていない・相手の仮説を自分が理解していない
からである。そしてまた、世の中に100パーセントの客観などありえない
ということで、お互いの仮説をどこまで翻訳し、折り合いを持つか、が知的活動なのだ、と述べるこの本の最後は、以下のように締めくくられます。
「すべては仮説にはじまり、仮説におわる」というわたしの科学的な主張は、はたして反証可能でしょうか?」
おたのしみ1
末尾に「科学オンチ」にも読みたいと思わせられる「もっと知りたい人のための参考文献」が挙げられています。
おたのしみ2
そうそう、この本は、目次を読むだけでも面白いです。目次は目次でもIndexというよりはSummaryといった感じ。是非書店で、目次だけでも読んでみてください。
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